藤井こんにちは!Webデザインが得意なマーケターの藤井です!
プロスペクト理論という言葉は、セミナーや本で聞いたことがある…
けれど解説記事を読んでも、自社のLPのどこをどう直せばいいのかまでは書いていない…
ご相談の場で、この状態のまま止まっている方によくお会いします。
知りたいのは用語の意味ではなく、明日書き換える1か所だと思います。そしてもうひとつ、「損をしたくない心理を使う」と聞いた瞬間に浮かぶ「それって煽りでは?」という抵抗感。ここを整理しないまま真似すると、売上より先に信頼を失います。
人は「得られるもの」より「失うかもしれないもの」に強く反応します。だからLPで足すべきは、新しい魅力より「申し込むと何を失うのか」という不安を消す情報です。
この記事では、次の3つを順番に書きます。
- プロスペクト理論を事業者の言葉に直すと何なのか
- LP・料金ページで使える4つの型
- 私が使わないと決めている線引き
プロスペクト理論とは?行動経済学の言葉を、事業者の言葉に直す
まず1文で言い切ります。プロスペクト理論とは、同じ大きさなら、得の嬉しさより損の痛みのほうを人は強く感じるという前提で、人の意思決定を説明する考え方です。心理学者のダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーが1979年に発表した論文で提唱されました。
用語はたくさんありますが、Webの改善に使うなら次の3つで足ります。ここでは3つで打ち止めにします。
参照点|人は「基準からの増減」で判断する
人は金額や条件を絶対値では見ていません。「今の状態」を基準(参照点)にして、そこから増えたか減ったかで良し悪しを判断します。同じ内容でも「今より手間が増える」と読めるか、「今の手間が減る」と読めるかで、受け取り方が変わるということです。
損失回避|同じ額でも、損のほうを重く感じる
得と損が同じ大きさでも、損のほうが心理的に重く効きます。「何倍重く感じるか」という係数は研究や条件によって幅があるため、この記事では数値を断定しません。実務で使うのは「重い」という事実だけで十分です。
確実性への偏り|不確かな大きい得より、確実な小さい得
「うまくいけば大きく伸びます」より、「少なくともここまでは確実です」のほうが選ばれやすい、ということです。将来の大きな成果を語るより、確実に手に入るものを明示したほうが背中を押せる場面は多くあります。
なぜLPと料金ページで効くのか|申し込み手前で止まる本当の理由


アクセスはある。最後まで読まれている。それでもフォームの手前で止まる。この症状のとき、原因を「魅力が足りない」と考えて訴求文を足す方が多いのですが、私は逆だと考えています。
止まっているのは、申し込むことで失う可能性があるものが見えているからです。
- お金
- 時間
- 社内調整の手間
- 失敗したときの面目
これらが未処理のまま残っていると、人は決断を先送りします。
現状維持バイアス|「何もしない」は損をしない選択に見える
今のままにしておけば、少なくとも新しい損は発生しません。だから「何もしない」が選ばれます。LPが競っている相手は他社ではなく、「今日は決めない」という選択肢であることが多いです。
保有効果|すでに持っているものを手放すのは惜しい
今の予算、今のサイト、今のやり方。すでに手元にあるものは、実際の価値より高く見積もられます。「今のサイトを作り直す」提案が重く感じられるのは、この効果が働くからです。
自社のどこで止まっているかは、感覚ではなく数字で確かめてください。離脱している位置はヒートマップやGA4で確認できます。


なお、読み進めてもらう前の段階、つまり情報量が多すぎて処理しきれない問題は、この記事ではなく認知負荷とは?Webサイトで迷わせない情報設計の5つの改善ポイントで扱っています。


LPそのものの役割や制作の基礎から確認したい方は、ランディングページ(LP)とは?発注側も知っておくべき制作の基礎をあわせてどうぞ。


「損をしたくない」心理を使う4つの型|LP・料金ページの書き換え例


ここが本題です。型は4つだけ覚えてください。書き換え例は、業種を問わない一般的な例として書いています(実在のお客様の文言ではありません)。
型①:失う不安を先に消す|保証・返金・キャンセル条件をボタンのすぐ近くへ
使う場面は、申し込みボタンの直前です。条件をページ下部の細かい文字に置いていると、迷っている人の不安は消えません。
- 書き換え前:ボタンの下に「お気軽にお問い合わせください」だけ
- 書き換え後:ボタンの下に「対応期間◯日以内/対象は◯◯/手続きはメール1通」のように、期間・対象・手続き方法を1行で明示
注意点は、実際に運用できる保証だけを書くことです。運用できない条件を書くと、後で対応できず信頼を失います。
型②:先に体験させる|決める前に手放すものを減らす
無料相談、お試し、サンプル。これらは「良さを知ってもらう」ためだけの施策ではありません。申し込みの前に失うもの(時間・断りにくさ)を減らすための設計です。
- 書き換え前:「まずはお問い合わせください」
- 書き換え後:「30分の無料相談(その場での契約はありません)」
注意点は、「無料」だけを強調しないこと。無料の後に何が起きるかを必ず書いてください。書かないと、読者は最悪のケースを想像します。
型③:行動しないコストを見せる|事実ベースで、淡々と
「今のままだと何が起きるか」を示す型です。効き目は強いのですが、ここが最も煽りに転びやすい危険地帯でもあります。
- 書き換え前:「今すぐ動かないと手遅れになります」
- 書き換え後:「着手が3か月遅れると、その間の問い合わせデータが貯まらないため、改善の判断は次の期に持ち越しになります」
感情を煽るのではなく、判断材料を並べるだけにとどめます。次の見出しの線引きとセットで読んでください。
型④:選ぶ基準を先に渡す|比較で迷う人を助ける
迷っている人が本当に恐れているのは、「間違った基準で選んで、後悔すること」です。だから価格を見せる前に、選び方の基準を渡します。
- 書き換え前:料金表がいきなり並んでいる
- 書き換え後:料金表の前に「選ぶときに見るべき3つの基準」を置く
なお、料金の並べ方そのもの(どう並べるとどれが選ばれやすいか)は、この記事では扱いません。そちらに興味がある方はゴルディロックス効果とは?松竹梅で真ん中が選ばれる理由と使い方をご覧ください。


| 型 | 読者が感じている不安 | 直す場所 | やりすぎの兆候 |
|---|---|---|---|
| ① 失う不安を先に消す | 失敗したらお金が無駄になる | 申し込みボタンの周辺 | 運用できない保証を書いている |
| ② 先に体験させる | 相談したら断りにくくなりそう | 問い合わせ導線・フォーム手前 | 「無料」だけが目立ち、その後が書かれていない |
| ③ 行動しないコストを見せる | 今のままで本当にまずいのか分からない | 課題提起のセクション | 読後感が不安と焦りだけになっている |
| ④ 選ぶ基準を先に渡す | 選び方を間違えて後悔しそう | 料金・見積もり説明の直前 | 基準が自社に有利な条件だけになっている |
藤井はここまで使い、ここからは使わない|信頼を落とす4つのNG
私の線引きは1文です。
事実である不利益は書いてよい。事実でない不利益を作るのは使わない。


使う側|誠実に使える範囲
- 実際に運用している保証・返金・キャンセル規定を、見つけやすい位置に書く
- 実在する枠や期間の制約を、その理由とセットで書く(なぜ限定なのかを説明できるなら書いてよい)
- 申し込み後に何が起きるか(連絡のタイミング、断り方、費用が発生する時点)を先に開示する
3つとも共通しているのは、読者が失うものを実際に減らしている点です。心理テクニックというより、情報開示に近い作業だと思ってください。
使わない側|信頼を落とす4つ
1. 虚偽の期限
毎日アクセスするたびに「本日限り」が更新される表示。1度気づかれた時点で、そのページの他の記述もすべて疑われます。
2. 在庫・残席の煽り
実際には減っていない「残り2名」。実在する枠なら書けますが、演出として置くなら使いません。
3. カウントダウンの偽装
再訪のたびにゼロから戻るタイマー。ブラウザを変えると数字が戻る仕掛けは、ユーザーはすぐ見抜きます。
4. 不安の過剰演出
「やらないと損をします」式の断定や、恐怖で判断を急がせる書き方。急いで決めた人は、後で冷静になったときに離れていきます。
やっかいなのは、これらが短期的には数字が動いてしまうことです。だから続けたくなる。けれど一度でも見抜かれると、その後に書く本当の情報まで信じてもらえなくなります。この信頼は買い戻せません。
迷ったときの自己チェック1問
書いた文章を、お客様の目の前で、そのまま口に出して言えるか。
「残り2枠です」と面と向かって言えるなら書いてください。言えないなら、それは事実でない不利益を作っている合図です。私はこの1問で判断しています。
実際の画面ではどう書いているか|自社ページの実例
理屈だけだと運用に落ちないので、自社サイトの現物を出します(以下は2026年9月8日時点でページを開いて確認した内容です)。
サービスについて のページでは、特典の案内に「ただし人手や人件費の関係で毎月5社に限定していますのでお早めにお申し込みください。」と書いています。ポイントは限定していること自体ではなく、人手と人件費という理由を併記していることです。理由が書けない限定は、私は書きません。同じページには「※ホームページ、ECサイト、ランディングページをご依頼のお客様に限ります。」という対象条件も置いています。条件を隠さず先に出すのが型①です。


サービスの流れ では、お問い合わせ→ヒアリング→ご提案・お見積り→ご契約・発注→サービスのご提供→確認・納品→ご入金という7ステップを先に開示しています。「納品月の末締めで請求書を発行させていただきますので、翌月末にてご入金願います。」まで書いてあるのは、お金がいつ動くのかが分からない不安を、問い合わせ前に消すためです。これが型②の実装にあたります。


心理学に基づくデザインの言語化 のページは、「どういった意図でデザインを制作しているかを心理学に基づいて解説しています」という趣旨で、実案件のLPの設計意図を公開しています。作ったものを並べるだけでなく、なぜその配置にしたのかを見せることで、依頼側が「何を買うのか分からない」という不安を減らす狙いです。


明日どこを1か所だけ直すか|優先順位の決め方


全部いっぺんに直そうとすると、何が効いたのか分からなくなります。決断に近い場所から順に、1か所ずつ触ってください。
- 申し込みボタンの周辺(型①):保証・条件・申し込み後の流れを、ボタンの近くへ
- 料金・見積もりの説明(型④):金額の前に、選ぶ基準を置く
- ファーストビュー(型③):課題提起の書き方を、煽りから事実の提示へ
直したあとは、同じ指標を2〜4週間見てください。1日単位の増減で判断すると、曜日や広告の影響を成果と読み違えます。私は「必ず増える」とは言いません。言えるのは、変えた場所と数字の対応を取れる状態にしておけば、次の判断が速くなるということだけです。
まとめ
- 人は得より損に強く反応する。LPで足すべきなのは、新しい魅力より「失う不安を消す情報」
- 使う型は4つで足りる(保証を近くへ/先に体験させる/行動しないコストを事実で示す/選ぶ基準を先に渡す)
- ただし、事実でない不利益を作る線は越えない。虚偽の期限・在庫の煽り・偽装タイマー・不安の過剰演出は、短期の数字と引き換えに信頼を失う
- まずは申し込みボタンの周りを1か所だけ書き換えて、2〜4週間見る
よくある質問
Q1. プロスペクト理論と損失回避は同じ意味ですか?
同じではありません。損失回避は、プロスペクト理論を構成する中心的な考え方のひとつです。Web改善の現場では損失回避の部分をいちばん使うため、実務上はほぼ重ねて語られます。
Q2. 返金保証を付けたら、返金だらけになりませんか?
条件設計を先に決めれば、そこまで極端にはなりにくいです。対象(どのサービスか)・期間(いつまでか)・手続き(何をすれば成立するか)の3点を決め、運用できる範囲だけを書いてください。件数や率の見込みについては、業種や単価で変わるため断定できません。
Q3. 「期間限定」は使ってはいけないのですか?
実在する期限なら問題ありません。線引きは「その期限が本当に存在するか」の一点です。毎回リセットされる期限、終わってもずっと出ている期限は使いません。
Q4. BtoBのサイトでも効きますか?
考え方は同じですが、失うものが変わります。BtoBでは決裁者が失うのは自分のお金ではなく、社内での面目や、稟議をやり直す手間です。だから「稟議に使える資料を用意しています」「導入後の担当者の作業はこれだけです」といった情報が効きます。
Q5. 料金プランの並べ方も心理学で決められますか?
その論点はこの記事では扱っていません。並べ方についてはゴルディロックス効果とは?松竹梅で真ん中が選ばれる理由と使い方にまとめてありますので、そちらをご覧ください。
自社のLPが「不安を消せているか」は、書いた本人がいちばん気づきにくいところです。公開前の確認に、下の特典を使ってみてください。
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参考・参照URL
※以下は執筆時点(2026年9月8日)に確認した参照先です。学術的な内容は暫定的な参照として扱い、本文では実験の被験者数・損失感の係数など、確認しきれていない数値は記載していません。
- Kahneman, D. & Tversky, A. (1979) “Prospect Theory: An Analysis of Decision under Risk”, Econometrica 47(2)(書誌情報を確認):https://www.jstor.org/stable/1914185
- The Nobel Prize「Daniel Kahneman – Facts」(2002年ノーベル経済学賞の受賞事実を確認):https://www.nobelprize.org/prizes/economic-sciences/2002/kahneman/facts/
- f design office「サービスについて」(2026年9月8日に文言を確認):https://f-design-office.com/service/
- f design office「サービスの流れ」(2026年9月8日に文言を確認):https://f-design-office.com/service/flow/
- f design office「心理学に基づくデザインの言語化」(2026年9月8日に文言を確認):https://f-design-office.com/verbalization-2/



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